解放新聞中央版11月28日号「主張」

第3回口頭弁論を控え、「全国部落調査」復刻版の闘いを広げよう!

 

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鳥取ループ「全国部落調査」復刻版事件裁判の第3回口頭弁論が1212日に東京地裁で開かれる。裁判を控えて「全国部落調査」復刻版糾弾の闘いをいっそう強化しよう。1212日の口頭弁論に全国から結集しよう。

前回の口頭弁論では、弁護団が提出した準備書面に基づいて二人の弁護士が意見陳述をおこなった。二人は鳥取ループの提出した準備書面を徹底的に批判するとともに、「全国部落調査」の差別性をあらためて弾劾した。

河村建夫弁護士は、鳥取ループが「被差別部落の定義が定まっていないから権利侵害はない」と主張していることに対して、「今回の訴訟は、『被差別部落』等の定義をめぐって議論する場ではない。被告が行った『個人情報を晒す』『同和地区の所在地情報をネットや書籍で公開する』という悪質極まりない行為の違法性を問う場である」と批判した。また、河村弁護士は「被告らは、『復刻・全国部落調査』は、『そもそも存在していない』といいながら、自ら印刷製本した本を、横浜地裁相模原支部に証拠書類として提出していた。事実に反する虚偽の主張をし、裁判所を欺そうとしている」と批判し、「絶対に許されない」と厳しく弾劾した。

いっぽう、山本志都弁護士は、鳥取ループが「部落の所在地はこれまでの出版物等でも公開されてきた」として、明治時代(1897)から現代(2003年)までの行政文書や部落史等の資料14点を証拠として提出し、「これらの書籍には同和地区の地名が書かれているのに、自分たちの行為の何がいけないのか」と主張していることに対して、14点の書籍は、研究や調査等において必要な限りで地区名を記載しているのであって、部落の地名を「被差別部落はどこか」という観点から公衆に対して示したものではない。証拠として提出された書籍と「全国部落調査」は、まったく性質が違うもので、「復刻・全国部落調査」は、サイトの宣伝通り、全国5300以上の部落名、住所、戸数、職業、生活程度の情報を「網羅的」に羅列し、「コンパクトに扱いやすく」「読みやすく」「現在の地名を掲載」したもので、被差別部落を晒し、差別を助長拡散させるものであるときびしく批判した。

 

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今回の事件で横浜地裁は出版差し止めの仮処分決定をおこない、横浜地裁相模原支部はインターネットへの掲載を削除するよう仮処分決定をおこなっているが、鳥取ループは反省するどころかますます挑発的な態度をエスカレートさせている。例えば、83日に東京地裁に提出した鳥取ループの準備書面には、「『全国部落調査』がインターネットで拡散され、回収不能になることは、被告鳥取ループが望むことである。これが『ふと湧いてでた“いたずら心”』などと思うのは、あまりにも甘い考えである」などと挑戦的なことを書いている。これは、鳥取ループがブログに出版を考えたのは、「ふと湧いてでた“いたずら心”」であると書き込んでいることを弁護団が取り上げたことに対する鳥取ループの対応であるが、当初「いたずら心」といっていたものを「本心だ」というように言葉をエスカレートさせている。また、鳥取ループは1017日のツイッターで「全国部落調査の発禁が解除されたら、今度は本格的にバンバン売って金儲けしますよ。それによってアホが憤怒して発狂することを含めて表現であり、アートなので」などと発信している。部落民が「憤怒して発狂すること」を期待しているがごとき理性をかなぐり捨てた挑発的な言辞を並べるようになった。

 

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言うまでもないことだが、鳥取ループの行為は、部落差別が現存するなかでは、部落差別を助長・煽動する許しがたい差別行為そのものである。2012年のプライム事件では、探偵社が職務上請求書を偽造印刷して身元調査をしていた実態が浮き彫りになったが、主謀者の一人は「お客さんの依頼は、同和地区かどうか結婚相手の身元調査だった」と説明した。各地の人権意識調査でも、1割近くが「身元調査は当然」と回答している。このような現状を考えれば、同和地区所在地一覧表を本にして販売することは、文字通り身元調査とそれにもとづいた結婚差別や就職差別を煽動する許しがたい差別行為にほかならない。鳥取ループの行為は、同和問題を解決するための行政や企業、宗教団体、労働組合などにおけるさまざまな取り組みの成果を台無しにする許しがたい行為であり、解放運動を冒涜(ぼうとく)する行為そのものである。同和地区を暴くことで、同和地区に暮らす住民に対する差別意識が煽られ、就職差別や結婚差別を受ける危険性が増幅することは眼に見えている。

 

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「全国部落調査」復刻版を企む鳥取ループを徹底的に糾弾しよう。そのための闘いを各地で進めよう。

そのひとつは、法務省・地方法務局の行政責任の追及である。人権侵犯事件を取り扱うのは法務省と法務局の所管である。ところが法務省は、本人へ「説示」文を一枚突きつけただけで、あとは高みの見物を決め込んでいる。法務省がその気になればプロバイダーに強力に働きかけて鳥取ループの差別情報(全国部落調査)を削除させることが出来るはずだ。法務省、地方法務局に対して一日も早く削除するよう強く働きかけよう。

2点目は、地方自治体や関係団体への働きかけだ。この裁判に対して「行政は中立だ」と言ったところがあるが、行政も高みの見物を決め込んでいないか。戦前の調査とはいえ、「全国部落調査」もともと地方自治体が調査した情報である。行政が集めた情報が差別情報として悪用されているという意味で、また地元の住民が差別に晒されているという意味において行政も当事者である。行政は当事者意識を持って鳥取ループの闘いに協力すべきではないか。鳥取ループの裁判は、「解放同盟VS鳥取ループ」の裁判ではない。ループの所業は戦後70年間、部落差別をなくそうとしてきた行政や学校、企業、宗教団体などに対する挑戦でもある。行政はもとより企業や宗教団体、労働組合などの関係団体が毅然として起ち上がり、鳥取ループの復刻版を許さない社会的な包囲網を築くことが必要だ。

3点目は、鳥取ループの「全国部落調査」復刻を許さないために「部落差別解消法」の早期制定を実現することだ。法案は、直接所在地情報の復刻を禁止したものではないが、「部落差別がゆるされないものである」(第1条)と謳った法案の精神からして、裁判においても重要な意味を持つ法律である。振り返って考えれば、部落差別を社会悪とする法律がないことが鳥取ループの蠢動を許すことにも繫がっている。鳥取ループを糾弾し、復刻版を許さないために「部落差別解消法」の制定に全力で取り組もう。(おわり)