解放新聞中央版4月4日号 「主張」
鳥取ループの「全国部落調査」復刻版発行と
ホームページへの掲載を徹底的に糾弾しよう!
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2月にはいって「鳥取ループ・示現舎」が「全国部落調査・部落地名総鑑の原典 復刻版」と題した書籍を発行し、販売するという情報をホームページに掲載した。鳥取ループによれば、この書籍は戦前に出された「全国部落調査」の復刻版だということだが、1936年に出版されたこの書籍には、全国5367の同和地区の地名、戸数、人口、職業、生活程度が詳細に記載されている。
また、鳥取ループはホームページで「全国部落調査」の掲載をふくむ同和地区の所在地および部落解放同盟の幹部の名前、住所、電話番号を掲載している。同和地区やその住民にたいする差別意識がなお根強く残っており、それを背景にした身元調査が続いている現状で、「全国部落調査」復刻版の発行とホームページへの掲載は、部落差別の煽動以外のなにものでもない。各都府県連・支部は組織をあげて鳥取ループ糾弾闘争に立ちあがろう。
プライム事件とよばれた2011年の戸籍謄本等個人情報の大量不正取得事件では、偽造された職務上請求書によって何万枚もの戸籍や住民票が不正に取得されていたが、主謀者の1人は法廷で「戸籍、住民票は同和地区出身者かどうかの身元調査のためにとった」と証言した。いっぽう、これらの事件とは別に、現在でも市町村にたいする同和地区の「問い合わせ」事件が報告されている。「結婚相手が同和地区かどうか知りたい」「土地を買って家を建てるつもりだが、近くに同和地区があるかどうか教えてほしい」。問い合わせは電話だけではない。市役所の窓口に直接くる市民も少なくない。
このような現状のなかで、同和地区の所在地を公開することは、部落差別の煽動そのものだ。「発行・販売」は差別を助長拡散させるものであり、部落出身者にはかり知れない被害が出ることは明らかだ。
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部落解放運動の歴史は、部落出身者にたいする身元調査との闘いの歴史でもある。実際、1967年の壬申戸籍事件、1975年の「部落地名総鑑」事件、2011年の戸籍等大量不正取得事件など、くり返し部落出身者への差別身元調査事件が発生してきた。
1975年に発覚した「部落地名総鑑」は、中央融和事業協会が作成した上記の「全国部落調査」をもとにして作成されている。部落解放同盟が厳しく追及した結果、総理府総務長官は、「差別を招来し助長する悪質な差別文書が発行され、一部の企業においてそれが購入されたという事件が発生したことは、まことに遺憾なことであり、極めて憤りにたえない」という談話を発表した。また、総理府総務副長官と法務・文部・厚生・農林・通産・労働・建設・自治各省事務次官の連名で、各都道府県知事などあてに、「冊子は、同和対策事業特別措置法の趣旨に反し、特に同和地区住民の就職の機会均等に影響を及ぼし、更には、様々の差別を招来し、助長する極めて悪質な差別文書であると断定せざるを得ない」として、住民にたいする啓発や企業にたいする指導を求める通達を出した。
いっぽう法務省は、事件発覚直後から各法務局を通じて調査をおこない、購入企業を探し出し、購入ルートを調査する一方、各企業が購入した「部落地名総鑑」やチラシを回収し、法務省に集めた。発覚から2年たった1977年9月には、法務省が集めたダンボール箱4つ分の「部落地名総鑑」など(4種113冊の「部落地名総鑑」と5種類のチラシ7枚)が、東京の大井清掃工場に持ち込まれ、解放同盟中央委員長らの立会いのもと、焼却処分された。
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鳥取ループによる発行・販売とホームページへの掲載は、就職差別をなくすための国や地方自治体のさまざまな努力と成果を台無しにし、今後の公正採用選考をめざす人権施策に大きな弊害をもたらすものだ。また、結婚差別に代表される部落差別をなくすとりくみのうえでも大きな弊害をもたらすものだ。
1975年の「部落地名総鑑」事件を教訓にして、国は高卒者の統一応募用紙の作成や公正採用選考人権啓発推進員の設置、企業の公正採用選考のための人権啓発研修などにとりくみ、成果をあげた。また、部落問題を解決するために1969年に同和対策事業特別措置法を制定し、以後33年にわたって同和地区の住環境の改善、教育の向上、産業の振興、職業の安定、福祉の増進、差別意識の克服などの諸事業にとりくみ、一定の成果をあげてきた。また、2000年に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」を施行し、同和問題解決のための人権教育・啓発を推進し、全国の都道府県や市町村もこの法律にもとづいて教育啓発にとりくんでいる。鳥取ループによる発行・販売は、これらの行政の努力とその成果を台無しにするものでしかない。
また、この発行・販売は、部落差別を撤廃するために長年にわたってとりくんできた部落解放同盟の運動の成果を台無しにするものでもある。
全国水平社の結成から94年、部落解放運動は特別措置法の制定とそれにもとづく諸施策の実施で住環境の改善や教育の向上、産業職業の安定など大きな成果をおさめてきた。また、同和教育や啓発によって国民の差別意識も少しずつ改善されてきた。ところが鳥取ループは部落民の人権を踏みにじりホームページ上に同和地区を掲載することで、そこに暮らす住民にたいする差別意識を煽る行為にでているのだ。
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部落解放同盟中央本部は、この重大差別事件にたいして徹底的な糾弾闘争をすすめることを確認し、ただちに行動を開始した。中央本部は、インターネット通販のアマゾンに予約販売の中止を要請し、アマゾンは了解した。また、大手の出版流通業者に書籍をとりあつかわないように要請し、業界もとりあつかわないと回答した。いっぽう、法務省との交渉で「部落地名総鑑」の処理と同様に迅速な処置を強く求めた。また、個人情報保護委員会(内閣府の外局)と交渉し、法的な規制を求めた。鳥取ループにたいしても発行中止とホームページの掲載削除を直接求めた。しかし、鳥取ループはそれに応じなかった。
中央本部は、全国大会終了後、緊急の代表者会議をひらき、糾弾闘争本部を立ちあげるとともに、緊急のとりくみとして、各都府県連が地方法務局に発行禁止とインターネットの掲載削除を求めるよう要請した。また都府県や共闘会議、同宗連、同企連など関係諸団体にたいして発行禁止とホームページ掲載削除のための協力をよびかけた。
鳥取ループの発行・販売は差別の煽動である。また、差別の助長拡散行為である。全国の各都府県連や支部は、「全国部落調査」復刻版の発行・販売をただちに禁止する措置をとるよう法務局に働きかけよう。また、「同和地区Wiki」サイトをただちに削除する措置をとるよう法務局ほか関係機関に働きかけよう。各都府県連・支部は、組織をあげて鳥取ループ糾弾闘争に立ちあがろう。