復刻版事件裁判の傍聴記

 

一般社団法人 部落解放・人権研究所

   所 長  谷川 雅彦

 

「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の第1回口頭弁論が5日、東京地裁で開かれた。
口頭弁論では、原告を代表して片岡明幸部落解放同盟中央本部副委員長が陳述した。
片岡副委員長は、「全国部落調査」復刻版の出版や同和地区の所在地情報の流布が1975年に発覚した部落地名総鑑差別事件と同様、結婚差別などの差別被害を生じさせるものであると指摘した。
またこれらの行為は国がすすめてきた就職差別撤廃の取り組みや差別身元調査根絶の取り組みの成果を真っ向から否定するものであり、部落解放運動を妨害するものであると述べた。
さらに鳥取ループM等は裁判所が出版の差し止めの仮処分を決定した「全国部落調査」復刻版をインターネットのオークションに出品するという司法を冒涜する行為を行っていること、差別の被害実態についてまったく触れていないことも厳しく指摘をした。
中井雅人弁護士は、鳥取ループM等は同和地区の所在地情報公開の同機を「いたずら心」であるとウェブ上に公開しており、滋賀県の隣保館の所在地情報の公開をめぐる最高裁判決をあざ笑うかのようにその情報をウェブ上に掲載するなど司法に挑戦していると指摘。
M等の行為が差別に利用されることが明らかな根拠として第一に、「部落差別解消法案」が自民、公明、民進の三党の議員提案で国会に提案され継続審議となっているように部落差別が日本社会に現存していること。第二に、ヤフー知恵袋などにもインターネット上で同和地区の所在地を尋ねたり、M等が公開するインターネット上の情報を利用して回答するなどネット上で差別調査が公然と行われていると述べた。
その上で中井弁護士は、M等の行為は、日本国憲法14条1項に保障された「差別されない権利」の侵害であることを強調した。そして「差別されない権利」を侵害する「表現の自由」は認められないと主張した。
次回は9月26日、午前11時から東京地裁で行われる。