「全国部落調査」復刻版出版事件
第4回口頭弁論 傍聴記
一般社団法人 部落解放・人権研究所
所 長 谷川 雅彦
東京地裁で第4回目の口頭弁論が開かれた。口頭弁論は開廷から約10分ほどであっけなく終了した。示現舎が裁判所に提出した準備書面に沿い約5分間にわたって主張を述べた。
はっきり言ってあまりにも早口だったので何を言っているのかほとんど理解できなかった。裁判終了後の報告集会、そして彼らのブログを読んでやっとその内容が理解できた。
あまりにも支離滅裂な内容で紹介する気にもならない。裁判を傍聴した感想を書いてほしいと言われたがまじめに論争する相手ではないというのが正直な感想。私の問題意識は裁判開始から一貫して、部落差別の被害をどう立証するのかということ。東京地裁に起こしている裁判は、示現舎という会社に対して全国部落調査の公表中止と2億3320万円の損害賠償の支払いを求めるというもの。原告は部落解放同盟と247人の部落出身者である。全国部落調査の公表がどのような被害を生じさせたのか、とりわけ247人の原告がどのような被害を被ったのかが裁判の焦点である。この被害をいかに具体的に証明できるのかである。裁判は論争の場ではない。裁判は法律にもとづいて起こっている事件を判断する場である。裁判闘争という方針を出した部落解放同盟はそれを証明する責任がある。247人一人ひとりに自らが示現舎の全国部落調査によって受けた被害を明らかにさせなければならない。双方の主張を述べる口頭弁論は次回(6/26)で終了するようだ。今後、裁判闘争は被害を立証する「意見陳述」や「証人尋問」に移るそうだ。一般的な部落差別被害ではなく示現舎の全国部落調査の公表による被害である。部落解放同盟が原告と原告が所属する都府県連に呼びかけ、徹底した差別の被害実態調査の方針を打ち出すべきだ。私が所属する部落解放・人権研究所も弁護団と一緒になってぜひ調査に協力したい。(おわり)